「3人は喫茶ルームにいるとか言ってたけど、何処だろう?」
「ぇ~とぅ♪ぉ茶が飲めるのはぁ~〝カフェ・ド・ロハン〟か〝フリマ〟です~ぅ」
「フリマ?」
「はぃ、個人やギルドが自分達で作った物を展示して販売してるんですぅ。飲食物や日用品、雑貨。それにムービーとかもあるんですよぉ。この間見たラブストーリーなんか感動しちゃって泣いてしまいましたぁ~」
「へえ、そんなのもあるんだ。商業ギルド活動もいよいよ本格的になってきたわね。じゃあ、案内してね」

ヴァルゴ・ダンジョンの中央にあるなだらかな螺旋階段を上って行くと、各階には壁で区切られた小スペースにそれぞれ工夫を凝らしたデザインの看板が掲げられていた。それには占い、スポーツ、ガーデニング、アパレル、ムービーなどいろいろな物があり、佳穂は喫茶店を見つけて入ろうとしたがフリーマーケットから見るのが〝通〟だと教えられてそれに従った。最上階に着くと、そこは中央の広いスペースの店には人々が屯していたが、ガラスで四方が囲まれていた。壁とガラスの間にはテーブルと椅子が置かれていて、休憩をしている人々が目に付いた。また、隅には屋上に上がる階段があり、外の風景も楽しめるようであった。周囲を見渡して先に行った者達を探すと、西側のテーブルで寛いでいるのを見つけた。

「お待たせ」
「ぉ待たせしましたぁ」
「もぅ、待たせすぎだよ」
「こんばんわ」
「ごめん、ごめん。私、じっくり見ないと気が済まない性質なのよねえ。あれ、うめちゃん。用事があるって言ってたけど、もう済んだの?」
「はい、用事が終わったってメールしたら、ルナさんに拉致されてしまいました」
「で、きのぴーは・・・買い出し?」
「ううん、急用が出来たからって、急いで帰っちゃったの」
「ははーん、さては例のだね。あの二人は何時になったら結婚するのかしら?」
「なんかね、内縁ってのが気に入ってるみたいで、当分しないみたいだよ」
「そうなんだ」
「ところでその娘は?」
「この娘はアリエスちゃん。一緒に来た人と離れてしまったそうなの。えっと、右からうめちゃん、ルナちゃん、シルくんだよ」
「アリエちゃ、お腹すかない?わたし、バイト代が入ったから何かご馳走してあげるよ」
「わーい、ありがとう、ルナ」
「ゎたしもぉ腹ペコペコですぅ」
「佳穂ちゃは?」
「うん、私は初めてだし、いろいろ見て回るわ」
「じゃ、私が案内しましょうか?」
「ありがとう、うめちゃん。お願いするわ」

ルナ達は飲食店の多い北側に向かい、佳穂達は西側から歩いて回る二組に分かれた。

「ねね、うめちゃん。ここと下にあるお店の違いって何かあるの?」
「そうですね。ここは誰でも自由に出せるんですけど、下はGM社と契約とかしないと駄目だそうですよ」
「契約?」
「ええ、いろいろと規定があるそうなんです。まず、契約申請者はギルドマスターであること。それから、ギルドマスターを含む代表者3名はヒーローまたはヒロインの称号を授与されていないと駄目なんだそうです。佳穂さんの実家にもいるんですよね?」
「ええ、本家のお姉さま達はヒロインの称号を持っているわ。でも、自由に出店が出来るならフリマで良いんじゃないの?」
「それがフリマだと良い物を作ろうとすると自分で諸々の材料を揃えたりしないといけないので大変なんだそうですけど、契約するといろいろと豊富な種類の材料の提供があるらしくって、凄く簡単に良い物が出来るそうなんですよ。それから売上げが悪いお店は契約の破棄をされてしまうそうです」
「なるほどね。あれ、シルくん、どうしたの?」
「ここの丼物は凄く美味しいって評判なんだよね」
「私、知ってます。剣さんが常連だっていう有名なお店でしょ。契約店になってもおかしくないくらい美味しいって評判だそうですよ」
「シルくん初めてなのに詳しいのね。でも、剣さんって誰なの?」
「知らないのですか!ベストセラーの“剣さん事件簿”で有名ですよ。事件を解決する時の決め台詞が〝カツ丼、食うか?〟と言って、犯人を落すんです。元々、兵役中に事件捜査をしてたらしいのですけど、今は私立探偵が本業らしいです」
「佳穂さんはいろいろ詳しいけど、そういうことには疎いんだね」
「だって、私〝箱入り〟ですもの!」

(関係無いと思いますけど・・・)



「野菜とベーコンのパスタ、クリームスパゲッティに玄米リゾット。それと、スコーンにオレンジジューズ」
「そんなに夜食食べて太らないの?」
「はぁーぃ。天然はぁ太らないんです」

(どんな関係?)

「バイキングですから、いろいろ試食しないとです」
「じゃ、私も。アリエちゃも好きなの選んで」
「わーい」
「それと、すぃませーん!これDLでお願いしまーすぅ」
「はい、DLですね」

れかんはあるムービー販売店で以前見たことのある恋愛ムービーを買い求めた。
ムービーの種類にはSとDLがあり、Sはその場限りの一人用の鑑賞で、DLは再生場所、回数や人数の制限が無かった。ほとんどの人はSで済ませていたが、値の張るDLを選んだのは気に入ったからである。

「あ、さっきの場所は取られちゃったみたいだね。仕方ない、屋上にしよう」

屋上に上がると、仄かな外灯で照らされていて、そこに幾つかあるテーブルのひとつを囲む椅子にそれぞれ腰を下ろした。
DLした物を再生し、少しずつ選んできた食べ物をパクパク、モグモグと頬張った。

「もぉ~、ほんとっムカつきません?こういう男」

(え、何?)

「ルナさんもそう思いますよね?こんなのが彼氏だったらどう思いますぅ」
「そ、そうね。私、パスする」

「分かるぅ、分かるゎ。でも、好きになっちゃぅんですよねぇ~」
「そ、そうね。私も好きになる」

「やっぱり、分かれちゃった方が良いですよねぇ~」
「そ、そうね。そうかもしれない」

「ルナさん、さっきから頷いてばかりじゃぁりませんかぁ?」

(あ、あはは・・・)

「そういうのはね、最初からお話をしないのが良いんだって」
「それもぉ、有りかもしれませんね」

(詳しいのね・・・)

「ソフィーヤが言ってたもん」



「ぎゃーぁ!」

突然、遠くの方で叫び声があがった。
ルナ達は辺りを見渡すが、そこには3人以外は誰もいない。
席を立ち、下に見えるダンジョンの敷地を見て回った。

「あ・・・あれはエレメンタルのボス!何でこんなところに」

動揺する二人の傍で、少女は微笑み、目を輝かせていた。


次回に続く・・・
『ID〔VIRGO DUNGEON〕戦闘編』




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